​​求道者は黙して嘘をつく​…

「真理は "今ここ" 無心にあり!」無心から世間を眺める一風変わった賢者の視点をARTな写真と共に洞察していきます。

「亀戸テーラー」…2話

 

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不気味な声

 

「亀戸テーラー」と書かれた

重厚感たっぷりの重い扉に両手をかけると、

足を踏ん張って体重を乗せ

ググッと一気に中まで押した。

 

 

"ギギィー" と古い蝶番の金具の甲高い音が

細い路地に反響して鳴り響いた。

 

 

その音はまるで

「又きたのか…」

と言っているかのように聴こえ、反射的に

来客に対して随分と無愛想なんだな…」

と思わず口にしてしまった。

 

 

すると扉の中から間髪入れず、

「客…ここに客なんて来るもんか」と確かに

そう聴こえた。

 

 

その中というのが、

部屋の中なのか頭の中なのか

はっきり分からず

思わず口をつぐんでしまった。

 

 

重い扉を力一杯押したせいか、

ドアノブを握る手にじんわりと汗をかいて

いる。

 

 

暑い盛りでも季節感が全く感じられない

この路地なのに、

この扉に手をかけると真冬でも

いつもそうなる。

 

 

しかし、毎度のことながら

その手に汗を握る感覚が

私と現実世界とを繋ぐ唯一の手がかり

ような気がしてなぜか安堵感を抱くのだ。

 

 

その感覚がなければなんの意味もない気がする

全くなんの意味もない気がするのだ…。

 

 

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タキシード姿のマネキン

 

暑かった商店街から路地に入ると

途端に空気が冷んやりとする。

 

 

喧騒と人の熱気が通りを熱くさせてるのだろう

とそう思うと

「お前は違うのか…」

とどこからともなく声が聴こえ、

「なんのことだ…」

と問い返したが返事はなかった…。

 

 

「亀戸テーラー」の重い扉を押し開けると

中は更にヒンヤリしていた。

 

 

扉を開けると、薄暗い路地の灯りが

真っ暗な店の中に遠慮がちに入り込み、

古い床の絨毯を映した。

 

 

更に扉を開くと、灯りはタキシード姿の

小柄な初老のマネキンの足下まで進んで

いった。

 

 

しかし、灯りはかかとをつけて

爪先を少し開いた上品な黒い革靴辺りまでしか

届かなかった。

 

 

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支えているのもやっとなくらいに重い扉は、

手を離すと勢いよく閉まるのだが、

何故か全く音がしない。

 

 

蝶番すらうるさいこの古い扉に

上質な緩衝材が付いてるとも思えないから

いつも不思議に思うのだ。

 

 

音がしないとは分かっているが、

それでも大きい音がしやしないかと気になって

いつも扉が閉まるのを最後まで見てしまう。

 

 

すると必ず頭の中に

「本当に扉があるのか…」

というフレーズがよぎってくる。

 

 

"どういう意味だろう…"

と考えだすと今度は

「意味があればな…」

という言葉が確かに聞こえた。

 

 

その言葉は、誰かが私の中に居て

喋りかけてくるようで、

その答えがこの重い扉の中に

あるような気がして、

ついつい扉に手をかけてしまうのだ。

 

 

閉まる扉を見ていてふと外に目をやると、

黒猫の姿はそこになかった…✍️

 

 

…続く

 

 

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