​​求道者は黙して嘘をつく​…

「真理は "今ここ" 無心にあり!」無心から世間を眺める一風変わった賢者の視点をARTな写真と共に洞察していきます。

「亀戸テーラー」…4話

 

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異次元空間

 

「亀戸テーラー」を目指して

この扉に通じる路地を入った瞬間から、

まるで異次元空間にでも迷い込んだかのような

雰囲気になる。

 

 

それはまるで、

そこにいる時ははっきりと自覚しているのに、

目が醒めるともう覚えていない

夢の世界のようだ。

 

 

路地に入ろうと決めた瞬間から

声にならない声が聴こえてきて、

いちいち私の呟きや考えに口を挟んでくる。

 

 

その言葉の意味はいつも抽象的に思えるが、

どこか的を射ているような気がして

放っておく気にはなれないのだ。

 

 

声の主…

 

意を決して重い扉を開けると、

その声はハッキリと聞こえるようになり、

その声の主は室内にポツンと佇む

一体のマネキンであった…。

 

 

いや、マネキンだと思った物は

急に明るくなった室内に私の目が慣れてきて、

ハッキリとその像を認識した瞬間にスイッチが

入り、

シルクハットを目深に被って口髭を蓄えた

小柄な初老の男性であった。

 

 

すると初老の男性は突然喋り出した…。

 

 

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「よ〜〜〜うこそいらっしゃいました〜!

ど〜もど〜もど〜もど〜も、

よくおいで下さいました。

 

 

えぇえぇえぇえぇ、

ご存知「亀戸テーラー」へようこそ。

 

わたくしお客様のことをずっとお待ちして

おりました〜、はいはいはいはい。

 

 

あっ、いえいえいえいえ

"待つ" と申しましても

お客様が来られるのを首を長〜〜〜〜くして

待っていた訳ではございません。

 

 

えぇえぇえぇえぇ、

そうなんですそうなんです、

来られる方は皆様どうも勘違いなさっている

ようでして、

それを説明するのに一苦労なんでございますよほ〜〜〜ほっほっほっほっほっほ。

 

 

あれあれあれあれ…

お客様もしかして「亀戸テーラー」を

ご存知ないのではございませんか…

だってお顔にそう書いてありますよ。

 

 

なになになになに、

「この男はなんだ…?

急に喋り出して、私のことを知っているのか?

…ここは一体どこなんだ…?」

 

とでも書いてあるような

お顔をしてらっしゃいますです…はい。

 

 

いやいやいやいや、

そんなことはございません、

そんなはずはございません、

そんなバカなことはございません。

 

 

だってその証拠にほら、

またこうして来られてるではございませんか。

 

 

前回もご来店されてご希望通りのお召し物を

纏って帰っていかれたではありませんか〜。

 

 

さぞかし気に入って頂けたからこそ

また来られたのでしょう?

 

 

気に入らない訳はございません、

そんなはずはございません、

絶対にそんなことはございません。

 

 

わたくしお客様のご希望通りのモノを作って

差し上げてる訳ですから、

お気に召さないはずがございません。

 

 

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とはいえ、心底喜んで帰られたお客様は

これまでたった一人も居ないのですよ。

それをわたくしのせいにされましても

どうも困ってしまいますです…はい。

 

 

わたくしはお客様のご要望通りのモノを

ご用意しているだけですから、

わたくしに責任転嫁するのは

お門違いってもんですよ…はい。

 

 

だが…しかし…それでも…やっぱり…絶対に…

皆様わたくしのせいだと仰るんですよ…はい。

 

 

ほ〜〜〜ほっほっほっほっほっほっ…。

あ〜おかしい。

ほんっとうにハラワタがよじれそうなくらいに

おかしいんですから。

 

 

だってこれが笑わずにいられますか?

これまでたったの一人も満足された方が

居ないなんて仕立て屋としてどうなんでしょ。

 

 

それでも皆様また必ず来られる。

いや、来られるというか "戻ってくる"と

言った方が正確でしょうか…はい。

 

 

実際お客様もこうして戻って来られた

訳ですからねぇ…はい。

 

 

えっ、なになに…

「ここに来たことを覚えていない」

そうお顔に書いてありますよ。

 

 

そうでしょ そうでしょ そうでしょ そうでしょ

はいはいはいはい、

わかります わかります、

そのお気持ちはよ〜〜〜〜くわかります。

 

 

だって皆様そうでございますから、

何もお客様だけが特別おかしいという訳では

ございませんのです…はい。

 

 

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謎の仕立て屋

 

私は昔からよく喋るお調子者は嫌いであるが、

勢いよく喋りだした調子のいいこの男性は

どうも嫌いではないようだ。

 

 

私の考えを先回りして…

いや、瞬時に読み取って説明されるから

私から話すきっかけが中々掴めない。

 

 

気になることは沢山ある。

 

 

ここは一体何なのか、

いつからやっているのか、

これまでも私はここに来たことがある

ようだが、これまでといい今回といい

一体どんな目的で来たというのか。

仕立て屋のようだが別に服を欲しいとは

思っていない。

それに私の持っている"モノ" の中で一体どれが

ここで作られたモノなのだろうか…。

 

 

聞きたいことは山ほどあるが、

この男は一体いつまで喋る気なのだろうか。

 

 

お調子者は嫌いなはずだが、

どうもこの男は嫌いになれない。

話を聞いているのが嫌ではない…✍️

 

 

…続く

 

 

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