​​求道者は黙して嘘をつく​…

「真理は "今ここ" 無心にあり!」無心から世間を眺める一風変わった賢者の視点をARTな写真と共に洞察していきます。

「亀戸テーラー」…5話

 

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"ここ"は一体どこなのか…

 

亀戸テーラーの主人の、

まるで川の流れのように止まる気配のない

お喋りの隙をついて私は唐突に質問をした。

 

 

「あの!!!…ちょっといいですか、

"ここ" は一体なんなのですか…」

 

 

「…えっ…"ここ"…ハテ…?、

亀戸テーラーでございますが、

お客様一体全体どうしてそんなことを

おっしゃるのですか…。

 

 

「いや、何もないから何屋なのかと思って…」

 

 

「うーん、しかし "ここがどこだ" とそのように

言われましても、わたくしは一体どう答えたら

よろしいのでしょうか…

 

 

だって "ここ" が "ここ" でなくて

一体どこだと言うのですか。

 

それ以上の説明ができるのでしたら

是非わたくしの方がお聞きしたいのですが、

"ここ" は一体どこなんでしょうか…」

 

 

「いや、そうじゃなくて、ここは一体何屋

なんですか」

 

 

「フルオーダーの仕立て屋でございます」

 

 

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とぼけた話

 

「でも、こんなに広いのにあまりにも

何もないから…きっと家賃も高いんでしょう」

 

 

この部屋に唯一あるものと言えば

主人の横に置かれた姿見の鏡だけである。

 

 

しかし、クリーム色の壁を映した姿見が

かろうじてそれと分かるのも、

姿見らしい外見をしているからであった。

 

 

んっ…?、

それにしても目が慣れてきたせいか、

さっきよりも部屋の中が黄色がかって

きたように見える…

気のせいだろうか。

 

 

「家賃というものはございません」

 

 

「あぁ、持ち家なんですね…。

それじゃあ名前は、あっ、名刺をもらえま

せんか」

 

 

「…ナマエ、ですか…ハテ?

メイシとは一体なんのことでございましょ…。

 

 

わたくしが与えられるモノといえば、

お客様のご要望通りのモノでしかないので

ございますが、メイシとは一体なんのことで

ございますでしょうか…」

 

 

「えっ?…名前ですよ」

 

 

「…ハテ?」

 

 

「名前を言いたくないんですか…。

それじゃあ営業時間は、

…何時から何時までやってるんですか。

休日はいつですか…」

 

 

「…エイギョウジカン…ですか。

…キュウジツ…ハテ?

…お客様それは一体なんのことで

ございますでしょうか…」

 

 

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笑う口元

 

この男はさっきから一体何をとぼけているの

だろうか。

 

 

しかしなぜかそのことを追求する気にはなれず

この主人が嘘をついてるようにも

思えなかった。

 

 

聞きたいことはいくらでもあるような

気がするのだが、

次第に頭がボーッとしてきた。

 

 

気がつくと壁の色はさっきよりも

白みがかってきたような気がした…。

 

 

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しばらくの間沈黙がこの空間を支配した。

 

 

その沈黙が異様な存在感を持っていたので、

ふと "沈黙ってのも存在なのかもしれないな"

とそう思った。

 

 

すると亀戸テーラーの主人は突然

「逆ですよ…」とそう呟いた。

 

 

「逆…どういう意味ですか」とそう尋ねると、

 

 

「ほら又始まった」

と口元に笑みを浮かべたままそう言った。

 

 

「あなたは私の心が読めるのですか?

一体なんでそんなことが出来るんですか…」

 

 

「そんなバカな」

そう言うと亀戸テーラーの主人の口元は

更に笑ったように見えた…✍️

 

 

…続く

 

 

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