​​求道者は黙して嘘をつく​…

「真理は "今ここ" 無心にあり!」無心から世間を眺める一風変わった賢者の視点をARTな写真と共に洞察していきます。

「亀戸テーラー」…6話 完

 

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一体何屋なんですか…

 

「あなたはなぜ私の心が読めるのですか…」

 

 

「ほ〜ほっほっほっほっほ。

心を読むだなんてとんでもない、

そういうことではございません」

 

 

「でも…じゃあ一体どんな服を作るんですか?

何か見せてください」

 

 

「…服ですか?

お客様何か勘違いなさっているようで

ございますが、

わたくし別に洋服屋ではございません」

 

 

「えっ…? じゃあ一体なんなんですか?

さっきから訳のわからないことばっかり言って

ここは一体なんなのですか」

 

 

「…ほら又始まった。

せめて口には出さないほうがいい」

 

 

「意味が分からないな」

 

 

「意味などそもそもございません。

これ以上何を申しても

無駄に時を浪費するだけでございますから、

それではそれでは、

そろそろお客様のご要望にお応えして仕立てた

"モノ" をご覧頂きましょうか…」

 

 

「えっ? もう出来てるんですか…」

 

 

「えぇえぇえぇえぇ、はいはいはいはい、

勿論ですとも勿論ですとも、

わたくし生まれてこの方

お客様にお仕えしてきて仕事を怠ったことは

これまで一度もございませんです…はい。

 

いや、一瞬たりともございませんです…はい。

 

 

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謎の目的

 

お客様様そう言えば先程 "ここの目的" とか

なんとかおっしゃっていましたでしょうか…。

 

 

それならわたくしのほうからもお客様の

"目的" について聞きたいことがあるのですが、

よろしいでしょうか…?」

 

 

私の質問をはぐらかす亀戸テーラーの主人の

態度が多少気に入らなかったが、

一体何を質問されるのかが気になって 

"えぇ、どうぞ"

と愛想なく返事をした。

 

 

「これはこれはありがとうございます。

 

それでは…

 

お客様は一体なんの目的で

生きておられるのでしょうか…。

 

一体なぜそれを食べ、そこで働き、

その方と付き合い、その方々と親しくなり、

その本を読んで、その服を着て、

その家に住み、その車に乗り、

その心と体で

なぜその親元に生まれたのですか…

 

一体ここに何をしに来たのでしょうか…」

 

 

 

「そ、それは…」

 

 

その問いは、これまで何度か自分なりに考えて

答えを出してきたモノばかりであったが、

その答えをこの主人の前でハッキリと言える

勇気がなかった。

 

 

この主人にはどこか全て見透かされている

ような気がしたし、この主人はきっと

"とりあえず出した私なりの答え"

よりも明確な答えを持っている気がして、

それを聞きたい衝動は確かにあるのだが、

"恥をかきたくない" 

という気持ちの方が勝って言葉に詰まって

しまったのだ。

 

 

「…そんなにお恥ずかしいですか?

一体誰に対して…」

 

 

そう言われると、なんだか一気に全身の力が

抜けて重力から解放されたようになった…。

 

 

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何かしらからの解放

 

"ふぅ〜" と大きく息を吐いて、

"そうか、この男には何も隠せやしないんだ"

と諦めた瞬間、

亀戸テーラーの主人はまた喋りだした。

 

 

「勿論ですとも、勿論ですとも、

一体全体何を隠せるというのでしょうか。

 

 

一体…全体…誰に…何を…どのようにして…

なんの意味があって隠す必要があるのですか。

 

 

秘密を持って "本当に" それで得をしたと

そう思ってるんでしょうか。

 

 

秘密を持ったり嘘をつくことこそが

お客様自身を騙していると言ったら

信じてはもらえないでしょうか…。

 

 

えぇえぇえぇえぇ、わかりますわかります。

 

論より証拠、そんな説教は

聞きたくないのでございましょう。

 

 

えぇえぇえぇえぇ、

存じております、存じております。

 

皆さまそのようにおっしゃりますから、

至ってそう考えるのは "一般的" で

ございますです…はい。

 

 

ならば…そろそろ…お客様の…ご要望通りの…

寸分の狂いもない…まさに宇宙に一つ…

 

お客様自身が求めて、

全くその通りに作られたオンリーワンな

"モノ" をご覧にいれましょう。

 

 

 

それではよろしいですか…。

 

"思っていたモノと違う"

 

だなんておっしゃらないようにして

下さいね…。

 

 

いいですか〜、いきますよ〜、目を開けて〜、

 

はい!それではこれが完全フルオーダーの

お客様こだわりの一品です…どうぞ‼︎」

 

 

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オーダーメイド

 

そう言うと亀戸テーラーの主人は、私の前に

姿見の鏡を持ってきて私の姿を映した…。

 

 

するとその瞬間に合わせて

室内はまた急に明るくなり、

赤い絨毯すらも見えなくなった。

 

 

いまの私に見えるモノは

鏡の中の自分の姿だけであった。

 

 

鏡の中の自分と目が合うと、

ふと "自分は誤魔化せないか…" とそう思った。

 

 

すると姿を消した亀戸テーラーの主人の声が

どこからともなく聞こえた…。

 

 

「ほら又始まった…

しかし声に出さないだけでも

充分でございます

 

言葉には気をつけた方がいい、

問題が複雑になりますから…」

 

 

…終わり

 

 

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