【朗読】[禅問答小説]禅の逸話 #7 香嚴の木登り/その1(1/2)【短編】
【ASMRささやき】[禅問答小説]禅の逸話 #7 香嚴の木登り/その1(1/2)【短編】
聡明なる香嚴
香嚴(きょうげん)禅師は中国唐代末期の
禅師であります。
"大禅者 百丈慧海 (ひゃくじょえかい) 禅師"
に師事していた香嚴禅師は、
百丈禅師遷化後(せんげ。高僧の他界)、
その高弟の為山霊祐 (いざんれいゆう) 禅師に
師事しました。
幼い頃より聡明な香嚴禅師は、
"一を聞けば十を知る"
と言われるほどの秀才でありました。
しかし、こと禅問答におきましては
秀才であればあるほどその道は険しく、
禅風はなおいっそう厳しく吹き付けるので
あります。
そんな香嚴禅師は為山禅師の下で、
ある公案 (禅問答) を与えられ、
そのプライドをズダズダにされることと
なります。
ここに有名な公案である、
「父母未生以前の本来の面目とはいかに」
が登場します。
この公案はつまり、
「お主が両親から生まれる前の面目とは何か、
未だ母親の胎内にいた頃のその心境を
言うてみろ」
と言うものであります。
単純に考えればその頃の記憶などない
だろうし、ここに来て百戦錬磨の師を前に、
生半可な言い分が通用するはずもありません。
元が賢いだけに、香嚴禅師はあれこれ考えに
考え抜きますが、常識の範疇で考えられるほど
禅問答が生易しいはずがありません。
長い年月を経て、遂に香嚴は降参しました。
「師よ、私にはどうにも分かりません。
是非答えを教えては頂けませんでしょうか…」
しかし為山禅師は譲らず、
「儂の答えは儂のものであり、お主のもの
ではない。
それを聞けばこの場で満足はするかもしれ
ないが、後で必ず後悔することになるぞ」
そう言われて香嚴禅師は自らに失望し、
諦めて為山道場を後にしました。
のちはその昔に慕った高僧の墓石のある
武当山へ行って、
墓守として日々を過ごすことにしました。
草庵を編んで数年の後、香嚴禅師は
庭の箒がけをしていました。
すると竹箒の先に一粒の小石が当たり、
"カーンッ" という音がきっかけで、
大悟徹底 (悟りを開いた) と言うのであります。
百丈禅師に師事してから十数年、
その時の喜びたるや、いてもたってもいられず、
為山道場に向かって手を合わせたと言います。
あの時為山禅師は、
こうして自分自身で体験することでしか、
我がものとする事は出来ないのだ、
ということを教えてくださったと、
改めて悟ったのであります。
香嚴の木登り
さて、前置きが長くなってしまいましたが、
そんな香嚴はある日、門下のとある檀家さんに
公案を与えました。
身も縮むような高さの崖上にある松の木に、
手を使わず口でぶら下がり、
枝も掴まず、足の下は断崖絶壁。
そんな時、ある人がやって来てこう尋ねます…
「達磨さんがインドからやって来た真意とは
何か…」
答えれば崖下へ落ちる。
仏法を伝える僧侶として応じなければ失礼に
当たる。
まさにこのような時どう答えるか…。
さて賢明なるあなたなら、
どう答えるでしょうか。
今日の所は前置きとして、明日の続きまで、
室内 (参禅の間。ここで毎日1日2回の短い時間
禅問答が行われる) へ行くのを待つ雲水の
ような気持ちで、一念考えてみて下さい…🙏
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